昨夜の喧噪を耳に響かせつつ5時に起床。八月の朝は早く既に明るい。潮風がそよぐ、昨日はあまり感じなかったのだが港町であることを実感する。台風が接近していたが影響は及んでおらず幸先の良い出発だ。ただしスマートフォンの電池が20数%しかなかったことは不覚であった。コンセントに挿したつもりが脱落していたのである。 函館駅に着いたが電池がないので写真を撮る気にすらならない。お茶とサンドイッチを買ってスーパー北斗に乗り込む。さすが始発であるので乗車率はそれほど高くない。自由席であることを心配したが杞憂であった。(室蘭辺りから乗車率は跳ね上がった)私にとっての初の在来線特急はサンダーバードであったがこちらも長距離でサンダーバードに劣らない良い走りをしてくれる。(サンダーバードは無くなってしまいましたね)


大沼公園を撮ってみたがうまくいかない。曇天は体験してみないと分からない魅力に詰まっているように思う。森からは車窓が開けて噴火湾沿いをひた走る。写真が全くないことは非常に悔やむべきだが景色は第一級のもので勉強をしようと思っていたが全くできなかった。特に長万部から先は奇岩がせり出しそこに穿った穴を突き抜けてゆく。小幌駅も確認したがすさまじい速度で後ろへ去って行った。断崖の領域を抜けると室蘭の工業地帯に突入。コンビナートが立ち並ぶ姿は自然に支配される北海道においてはむしろ頼もしいものである。停車駅の間隔が短くなって行くに従って乗客は増え私の隣にも人が座った。イヤホンから漏れ出てくる音が常に聞こえる。後ろでは中国人と思われる観光客が常に喋っている。苫小牧辺りではそれが頂点に達した。 南千歳では特急から降りてエアポートに乗り換える。


私はUシートなど予約していないので自由席だったがこちらも運良く座れた。新札幌辺りからは特に人が多い。


札幌駅は赤字のJR北海道らしからぬ豪華な作りで札幌の繁栄を思わせる。地下鉄3路線を有する二百万都市、札幌は想像したよりも規模が大きい。仙台より北にこのような町があるとは全くの予想外であった。

がっかり観光地として名高い時計台は改修中でこの状態ならばがっかりされない方がおかしいものである。

大通公園の先に聳えるテレビ塔。芝生はよく手入れされていて青々としていて数多の家族連れ、カップル、外人が彷徨いている。やはり自分は観光地に来るべきでないのだなと思って足早に通り過ぎる。

電停の近くである。ビルが建ち並ぶ姿は見応えがある。市電には中島公園まで乗った。車内には札幌マダムが高貴な会話を繰り広げている。三越にでも行ったのだろうか。我が盛岡の川徳とは比べものにならない大規模百貨店である。私には用がないところなので行かなかったが。タワレコに行こうかとも思ったがここでお金を使ってしまっては後々困るので行かなかった。

こちらは中島公園内にある豊平館。やることもなかったので入ってみたが、展示は思いの外少なく、辛うじて開拓使時代の面影を遺すのみだった。

今度は地下鉄に乗ってみた。ぶれまくっていて申し訳ない。結局一区間しか乗らなかった。すすきのでは札幌ラーメンとスープカレーを両方食べるという豪勢な食べ方をしてしまった。ラーメンはさほど美味しくなかったがスープカレーは今回の旅で最も美味しい食べ物だったように思う。喫煙席に案内されたときには驚いたが左右どちらも喫煙をする中長い待ち時間の後に角煮スープカレーにありつけた。大黒屋では図書カードを換金してもらおうと試みたが未成年であることがばれて取引は失敗に終わる。

ここでもわんこそばはやっているのかなとふと思ったがきっとやってはいない。

回転寿司とアイスの組み合わせは王道であるがネーミングが妙に面白かった。

北海道大学にも行ってみたが電池の残量が3%を切っており、カメラの起動が不可能に、よってクラークの写真を撮ることもできなかった。北海道大学は交通の便が大変良く、これを見ると東北大学など立地は最悪だとつくづく思う。盛岡大学や岩手県立大学はもっとひどいと思うが。 これ以降写真は無く文章のみである。札幌駅ではスーパーカムイに乗り、旭川へ向かう。朝が早かったのでうたた寝をまたしてもしてしまう。よって深川から旭川までの記憶は殆ど無い。札幌からすぐの所までは乗客は大変多かったが旭川に至って起きてみると乗客は殆どいなくなっていた。鉄道唱歌のオルゴールに続いて自動放送が旭川到着を告げる。旭川では快速北見に乗り換えて網走まで向かう。遠軽駅に入る直前の岩が美しい。あれは蜃気楼だったのかも知れないけれどサロマ湖の方まで見渡せてそこには霧が立ちこめていたように感じた。夕日の魔力であろうか。隣に座った作業服の中年男性から何やら嬌声が聞こえた気がしたがそれは犬であった。基本的に路線は山がちだがキハ54系は軽々と登ってゆく。二両での運行であったからかも知れない。留辺蘂駅では特急オホーツクと交換する。北見駅ではキハ40に乗り換えて網走へ向かう。この列車は知床斜里まで向かうものだ。列車は盆地のような所を進んでゆくので七時を回っても遠くに稜線が見えるものだ。車内では信州大学へ進学するとか熱心に語り合うカップルがいたものだった。北海道の辺境においても進学の話を聞かされることになろうとは思わなかった。今頃無事に受験できているだろうか。懐かしい夏の夜のフィラメントとなっている。網走駅に着いた頃は既に8時。遅い時間ではなかったが駅前にはすき家しかなくチェックインも何時か分からなかったので民宿に向かう。ランプという名前で一泊1500円ほどで部屋を貸し切れるのだから驚いたものだ。すき家に行こうか悩んだがいざ部屋に入ってみると外出する気分にはなれずテレビを見つつ携帯を充電して明日に備える。Wi-Fiも完備されておりこれ程の環境が提供されるとは思ってもみなかった。網走駅に近いので気動車の爆音がうるさく訳ありと言うことだったが繁忙期で1500円というのだからこれ程よいことはない。布団を敷いてゆっくりと寝られた。教育テレビではヤナーチェクのダラス・ブーリバをやるというのでずっとかけていた。クラシック音楽館の前の日曜美術館では井上安治という夭折の画家が取り上げられていて市井に生きる人々を久し振りに感じた気がした。ダラス・ブーリバは非常に面白い曲であった。
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